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今回のテーマは「引退のタイムリミットに何を備えるべきか?」です。先日クライアントの方から「引退までのタイムリミットが迫り事業承継が本格的な課題になってきました。先日それとなくめぼしい社員に承継の話をしたら、返事を濁されてしまいました。このままではいけないと焦りを感じます。何かできることはないでしょうか」というご相談をいただきました。
次期社長候補やリーダー育成は、多くの中小企業で課題になっていますよね。そんな中気になるのは「ぜひ継ぎたい!」と言われる会社とそうでない会社があることです。今回の相談者は残念ながら後者。では、どうしたら「ぜひ継ぎたい!」といわれる会社になるのか、私の意見をお伝えします。
まず、なぜ社員は返事をうやむやにしてしまうのでしょう。
社員の視点からすると、「会社を継いでも上手く経営し続けていけるのか」と自信が持てないのかもしれません。
創業の経営者の方は「強いカリスマ性」「野生の勘」での経営を行っている方が多く、それ自体はとても素晴らしいことです。無理難題でもその人ならばうまく泳ぎ切ってしまうというのは社長自身に強い魅力があるからなのでしょう。しかし、それは反面「予測ができない」ということでもあります。
社長としての考え方・やり方・マネジメントの仕方がわかっていれば時間をかけて習得することもできます。しかしそれがわからない・予測ができないままの経営を引き継ぐのは難しいものです。例えば「売上の乱高下を社長の勢いで乗り切っている会社」、「社長のカリスマだけで保っている会社」を継いで、上手くやっていけると思うでしょうか?
そういった状況に、不安を感じて社員は尻込みしている可能性があります。
では、その状態から抜け出し「予測可能」な会社を作るにはどうしたらいいのでしょうか。答えは「安定して売上をあげる仕組み」「社員が“会社”に愛着を持つ仕組み」を作ることです。
その際に重要なのが「客観性」です。これには2種類のものがあります。
まず、社員の目に自分の会社がどう映っているか、俯瞰して自分の経営を考えることが必要です。「本当に継ぎたい会社なのだろうか」、「継いだあとに切り盛りできるよう会社が仕組み化できているのだろうか」、「引き継いだ後経営していけると社長候補の社員に思ってもらえるだろうか」と見ていく客観性が重要です。
そしてふたつ目は「どんな社員に継いで欲しいのか」、「継いでもらう社員に会社をどう思ってもらいたいのか」を考えるための客観性です。当然、後継者には自分の作り上げた会社のことを思い、大切にしてもらいたいですよね。そういう人を選ぶために「経営者側の客観性」が必要となってきます。
今の会社がどう見られていて、自分の経営がどう思われていて、そして自分はどういう社員に継いで欲しいのかということが考えられれば、「どうすれば継いで欲しい人に継げる会社になるのか」、「どうすれば継ぎたいと思われる魅力的な会社になるのか」を考えられるようになると思います。その考えを持っていれば、今の会社に足りない仕組みを考え形にしていくことができるのではないでしょうか。
継いでもらいたいと思ったからといって、指名した社員が必ず後継者になってくれるわけではありません。経営者として、複数の選択肢を持っておくことが必要です。
客観性を持って会社の仕組みづくりをすることで、様々な選択肢を持つことが可能になります。
継いでもらいたい人を複数人選んでおく、M&Aというスタイルで会社を売却・もしくは買い取り経営者を取り込む、上場して外部の経営者を雇うなどの多くの選択肢を持つことができれば、状況にあった最善を選ぶことが可能になります。
改めて自分の会社を客観的に見るというのは、かなり難しいことかと思います。ですが、それを行えれば自然と、今の会社に足りない仕組みが見えてくるはずです。
「客観性」を意識し、「ぜひ継ぎたい!」といわれる会社の仕組みを作りましょう。そうすることで事業継承に複数の選択肢が生まれ、最善を考えられるようになります。
5年10年と時間をかけて『ぜひ継ぎたいと思える会社』を設計してはいかがでしょうか。