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今回は、書籍「オープンブック・マネジメント」から、社員の自主性を育てるための仕組みについて紹介します。
著者はビジネスアナリストのジョン・ケース。米国や北米で発行されている事業主・中小企業向けの月刊誌「Inc.」のライターをしていた人物で、「オープンブック・マネジメント」という言葉は彼が名付け親です。
書籍「オープンブック・マネジメント」は10章で構成されていて、前半の3章が理論編、4~10章が実践編です。この書籍をもとに、社員の自主性を育み変化に強い組織へ変えるためのマネジメントを解説します。
オープンブックの「ブック」とは、会社の財務諸表のことです。財務諸表を社員に対してオープンにするのが、オープンブック・マネジメントのコンセプトになります。
オープンブック・マネジメントが求められる背景には、市場や経済の変化があります。1970~1990年代はトップダウン型のマネジメントが主流でした。1人のリーダー、もしくは一部の幹部が指示を落とし、社員は思考を停止して言われたことだけを頑張ればよかったのです。
しかし近年は市場が複雑になったため、社員ひとりひとりが自主性をもって働くことが求められるようになりました。そのためには、社員が自主的に行動するための情報を提供しなければなりません。その情報が財務諸表です。
経営者と社員の目線を合わせ、一体となって目標へ向かっていくために、オープンブック・マネジメントは最適というわけです。
オープンブック・マネジメントの特徴として、次の3つが挙げられています。
ブレインマークスでも、オープンブック・マネジメントを導入しています。外部コンサルタントに入っていただき、売上やコストなど財務状況を全部オープンにすることをはじめて約4年。社員の意識はかなり変わりました。全員が数字を意識し、業績が悪くなればよくなるように努力をする。このようなことが社内で自然に起こるようになったのです。
さらに、オープンブック・マネジメントを取り入れることによって得られる変化として、次のようなことが挙げられています。
オープンブック・マネジメントでは、社員とマネジャーの役割は分けず、全員が新しいことに立ち向かう同志なのだと書かれています。つまり「それぞれがお互いの仕事のパートナー」だと考えるということです。会社がよいときは、社員ひとりひとりもよくなければなりません。逆に会社が困難なときは、すべての社員がそれを知って困難に立ち向かうというわけです。
財務諸表のなかには、社員には見せづらいという部分もあるでしょう。個人的には、すべてをつまびらかにする必要はないと考えています。ある程度、隠す部分があってもいいのではないでしょうか。ただ、見せられる部分はすべて見せていく必要があります。それによって、オープンブック・マネジメントの効果が得られるのです。
オープンブック・マネジメントを導入し、会社を変えるためには、次の3点が重要です。
前提として、オープンブック・マネジメントは万能薬ではないということがあります。結果や数値を共有することで情報格差をなくし、社員の自主性を生み出すという効果はありますが、経営戦略は練っていかなければなりません。業績を上げていくためのマーケティング施策も必要でしょう。
これらの結果を数値で共有する文化を作ることで会社を変えていくというのが、オープンブック・マネジメントなのです。
オープンブック・マネジメントを導入するための、具体的なステップは次のとおりです。
ひとつずつ解説します。
1.情報共有
その部署が仕事を進めるために必要なものだけでなく、企業全体の経営状況に関する情報を共有します。
2.ビジネスリテラシー研修
ビジネスリテラシーとは「会社がどのように利益を出しているのか、どのようにしたら利益が出せるのかが理解できること」です。財務諸表をオープンにしても、与えられた情報を理解できなければ意味がありません。用語の意味などを勉強していくことが大切になります。
3.エンパワーメント
エンパワーメントは「権限を与えること」「自信を与えること」という意味。つまり社員に権限委譲を進めていくことです。たとえばマーケティング予算ならこの人、といったように任せていきます。さらに問題解決にも可能な限り参加させて、自分が動いたことの結果が財務に反映されていく、という体制を作るのです。
4.成果報酬
社員が頑張ったことで得た利益を分配する仕組みは、とても大切です。金銭だけに限らず、頑張ったことを全体に周知するということでもよいでしょう。明確な目標を共有しておき、それがどのように達成されたかという評価も社内にしっかり共有することで、オープンブック・マネジメントが実現していくのです。
書籍「オープンブック・マネジメント」に書いてあることは、とてもシンプルです。自主性のある組織を作るためには、情報格差をなくす。そのためには経営者がハードルを下げて社員と共有していくことが大切ということです。
しかし、財務情報を共有するのは勇気がいること。「業績がいいなら給料を上げてくれ」と言われのでは?と怖く感じるかもしれません。逆に経営状況が思わしくない場合は、社員を不安にさせてしまう可能性もあるでしょう。
つまりオープンブック・マネジメントは、社員との信頼関係の上に成り立っているのです。実践すれば必ず結果が出るものではありますが、タイミングが重要になります。いますぐ実践しなくても「いつかオープンブック・マネジメントをやる!」と決めて、社員との信頼関係を構築したり会社の財務状況を整えたりして準備をしておきましょう。