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この本では「全員経営とは何たるか、どのように取り入れるべきか」について、大企業での実例を基に述べられています。この本では大企業を中心に説明されていますが、企業の規模を問わず、全員経営を実現したいと思っている経営者は多いはずです。
従業員30人以下の中小企業が全員経営を実践するにはどうすればよいか、この本を基に解説していきましょう。
この本の著者である野中育次郎氏は、一橋大学の名誉教授であり、企業組織・経営・人材マネジメントに精通しています。本に載っている事例はいずれも大企業ばかりですが、ポイントを抑えれば中小企業であっても十分実践可能です。
そもそも全員経営とは何なのか、簡単に言うと「社員全員が自律分散リーダーシップを発揮する経営の在り方」です。たとえば今回のコロナのようなピンチの時に、社員全員が大局を見て自律的に判断・行動できた会社は、全員経営と言えるでしょう。
しかし、言うは易し、行なうは難しです。どうすれば、このような“夢の組織”が実現できるのでしょう。野中先生は本の中で全員経営の肝を、「社内共通の価値基準を明確にすること」と述べています。日頃から、自社において何が最善か、何を基準に判断すべきか、をはっきりさせておくことが、自律を促すために欠かせないようです。書籍では、その裏付けとして以下のような事例を挙げていました。
・JALの経営再建
稲森和夫氏の指揮のもと、40項目に渡るJALフィロソフィーが確立され、社員たちの行動規範となりました。更に、部門別採算管理制度の「アメーバ経営」を採用することで全員経営を実践し、V字回復を達成しました。社員はそのフィロソフィーから生き方を学び、アメーバ経営で部門ごとに責任をもつことで意識改革が起こり、業績をみるみる伸ばしていったのです。
・ヤマト運輸のまごころ宅急便
「ヤマトは我なり」という社訓が示すとおり、全員経営を実施しています。そのような環境のもと、ある一人のセールスドライバーの案から高齢者の買い物代行や生活の見守りを担う「まごころ宅急便」というサービスが生まれました。一人一人が経営意識を持ち、最善を尽くすことで社会に役立つ新たなビジネスが誕生したのです。
・無印良品による実践知のマニュアル化
無印良品も一時期業績が悪化しましたが、全員経営の導入により復活した企業のひとつです。まずはスタッフそれぞれの実践の知識やノウハウをマニュアルに落とし込み、それに基づいた考え方や判断基準といった暗黙知を徹底的に掘り下げることで、マニュアルを越えた動きができるようになりました。
このように、大企業でも試行錯誤して価値観を共有することで経営を進化させています。いわば企業文化を変えることによって、全員経営を実現させているのです。
中小企業の経営者は「企業文化は自分で狙ってつくりにいくもの」という意識が薄いように感じられます。社長の個性=企業文化になってしまうこともよくある話です。
全員経営の実現には、企業を文化を狙ってつくる姿勢が必要です。ここからは、そのために必要な4つのポイントをお伝えします。
①共通感覚を基にした柔軟な組織運営
ルールや規則で社員を縛らず、共通の価値観に基づく経営・マネジメントを行なう。
②主観的な暗黙知をすり合わせて経験を積む
ブレインマークスで言うところのコア・バリューを徹底的にすり合わせ「言わなくてもこのレベルで仕事するよね」という暗黙知を上げていく。
③失敗を責めない文化をつくる
失敗を許容し、チャレンジを応援する社風をつくる。同時にセーフティーネットも用意することで、社員の自主性を応援する。
④凡事を非凡事化する
当たり前のことを軽視せず、高いレベルで実践する。これができる社員を評価し、経営者自身も我が身を振り返る。
いかがでしたか。
あなたの会社の文化は「全員経営」を実現する土台を築けているでしょうか。
大企業だけでなく、中小企業でも全員経営は可能です。企業文化を狙ってつくり、会社の共通認識を明確化する、それだけで全員経営は実現します。まずは会社の企業文化をどうつくるか考えてみましょう。それだけでも、この本のエッセンスを生かすことに繋がりますよ。