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今回のテーマは、「社員満足は綺麗ごとか?」です。
先日、経営者の方から「最近、社員第一を掲げる企業をよく見るのですが、正直なところ嘘くさく感じてしまいます。そんなに社員に迎合したら、社員になめられてしまうのではないでしょうか?」というご質問をいただきました。
私にも同じように悩んだ経験があるので、お気持ちがよくわかります。しかし、結論を先に申し上げれば、「社員第一」は綺麗ごとではありません。社員満足の追及は、会社のリスク回避のため、そして将来の発展のために欠かせないものなのです。
今回は、なぜ社員満足が大切なのか、社員満足の追及が経営の発展にどう役立つのかといった点について、私の経験談も交えつつお伝えしていきます。
まずは、社員満足の軽視がもたらすリスクの例として、私の失敗談をお話しします。
以前の私は、社員第一という考え方に懐疑的でした。なぜなら、「お客様の満足や会社の発展のため、まずはしっかり成果を出してほしい。給与アップや環境改善は、その対価として行なうものだ」と考えていたからです。
しかし、社員側は「まずは給与や労働環境を改善してほしい。そうすればもっと一生懸命働くのに」と考えているため、すれ違いが起こります。会社(経営者)と社員で、どちらが先に得をするか争っていたともいえますね。
当時の私は、「まずお客様満足や会社の発展、社員満足はその次」というスタンスを崩しませんでした。その結果、社員の心は次第に会社から離れ、売上は低迷し…ついには、組織崩壊を起こしてしまったのです。
社員よりもお客様の満足や会社の発展を優先する姿勢は、一見正しいように思えるかも知れません。しかし、社員満足を軽視すると、社員の不信やモチベーションの低下を招くばかりか、最悪の場合は会社の存続すら危うくしてしまうのですね。
それでは次に、社員満足の追及が会社にもたらすメリットについて考えてみましょう。
給与アップや労働環境の改善といった社員満足を追求すると、社員は会社に対して信頼と愛着を抱くようになります。さらに、誠実な社員であればあるほど、与えられたものに応えようと努力し、しっかりと成果を出すようになるでしょう。
そして、会社を愛し、会社の発展のために尽力してくれる社員がいれば、経営者は自らの後進を育てられるようになります。社員満足の追求は、経営者が現在の立ち位置を退いた後も発展を続けるような、持続性のある組織づくりへの投資だといえますね。
このように、社員満足の追及は会社の未来にとって良い影響をもたらします。しかし、中には自分の利益ばかりを求め、会社に貢献しようという発想を持たない社員もいるかも知れません。
ご相談を寄せてくださった経営者の方も、まさにこうしたリスクを危惧しておられるのではないでしょうか。そこで私は、対策として「採用にこだわる」ことをおすすめします。
採用にこだわる理由は、自分の利ばかり求める人をあらかじめシャットアウトするためです。
まず、経営者は「自分のビジネスで、どのように社会の役に立ちたいか」という理念を明確にしましょう。そして、採用の際にはその理念に共感してくれる人、「この人なら信頼できる」と思える人だけを雇用するよう徹底してみてください。
その上で給与の充実などの社員満足を追求すれば、社員は「自分の居場所」として会社に愛着を覚え、その居場所を守るべく努力してくれるようになるでしょう。信頼できる人だけを雇用し、その社員たちを大切に扱うことで、会社と社員が互いに与え合うようなWin-Winの関係を築けるということですね。
また、採用の段階で経営理念を示し、理念に共感する人だけを集めることは、「理念という共通目標に向かい、会社がひとつのチームとしてまとまれる」というメリットにも繋がります。採用にこだわることもまた、会社の未来への投資になるといえますね。
成果を得るよりも先に社員満足を追求することは、いわばギブアンドテイクの「ギブ」を自分から先に行うことです。これは、私たち経営者にとって非常に勇気がいることですね。
ときには、歯を食いしばるような苦しい思いをするかも知れません。しかし、その努力はきっと、大きな成果となって返ってくるでしょう。
求めるばかりの社員をできるだけ排除できるよう、採用にこだわること。その上で、社員満足を真剣に追及すること。会社の明るい未来への投資として、ぜひこれらにチャレンジしてみてください。