YouTube
今回のテーマは「難しい仕事を標準化する方法」です。
組織化を実現するために、業務の標準化は欠かせません。しかし、一度属人化してしまった業務を標準化するのは至難の業。特に経営者やトップ営業マンが長年磨き上げてきた「熟練技」は、様々な要素が複雑に絡み合うことで高い価値を発揮しています。「これをどのように若手に共有すればいいのか…」。標準化を前に途方に暮れてしまう経営者は少なくありません。
そこで今回は、高度な仕事を標準化する視点についてご紹介したいと思います。
「高度な仕事の標準化」は、私自身も数年に渡って頭を悩ませてきた課題でもあります。コンサルティングという「目に見えない価値」をどのように標準化するか。ありとあらゆる方法を試しました。その結果、辿り着いたのが「要素の分解」と「役割の分解」です。
まず、「要素の分解」からお話をしましょう。これは文字通り、熟練技の要素を分解することを指します。実は、熟練技も一定のパターンで構成されていることが殆どです。しかし、それが一般のレベルとは比べ物にならないくらい高い水準で行われるので、周囲からはわからないだけで、丁寧にひも解くと構成要素は意外とシンプルだったりします。
ぜひ、あなたの会社の「熟練技」を以下の3つの要素で整理してみてください。それを熟練者と一般社員とで比較すると、必ず違いが見えてくるはずです。
『要素1 知識』
その業務や業界に関する専門知識や豊富な事例。課題解決に必要な情報
『要素2 技術』
専門技術や自らのイメージを実現するための技術。また、目標達成の為の技術
『要素3 考え方』
仕事や自らの役割に対する認識、求められる成果に対する認識、在り方の認識など
前提となる考え方
このプログの読者は経営や教育に対して真摯に向き合う方が多いので、もしかしたら知識や技術の標準化には一定取り組まれているかもしれませんね。私自身も、この2つに関しては取り組み初期から注力していました。しかし、ある時気づいたのです。「知識や技術を伝えるだけでは何かが違う」。そこから様々な社員を分析してわかったのが、「そもそもの職種に対する考え方違う」ということです。
例えば、私や活躍しているコンサルタント認識している「顧客に生み出す成果」や「コンサルタントの在り方」に対する認識が新人のそれとは大きな差があったのです。
もし、あなたが既に知識や技術の標準化に取り組んでいるにも拘らず、なかなか品質が安定しないと思っているのなら、その原因は「考え方」にあるかもしれません。一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
要素を分解し、それぞれを可視化したとしても、人の成長には時間がかかるものです。それだけではなく、得意不得意もある。私もこの壁にぶつかりました。私が20年以上かけて磨き上げてきた高度な技を若手が発揮するには、難易度が高すぎると感じたのです。
そこで私が行ったのが「役割の分解」です。私一人でやっていた仕事を、分担して複数人で担ったのです。
現在のブレインマークスでは、コンサルタントとクライアントパートナーの2名体制でコンサルティングを行なうのが基本スタイルです。コンサルタントがクライアントの課題を聞き、その中から原因を特定して解決策を導き出す。そしてクライアントパートナーが解決のための実務支援を行なう。数年前にこの体制に組み替えてから、弊社のコンサルティング品質は一気に標準化したと感じています。一人の人間に高度な技術をいくつも求めるよりも、役割を切り分けて、それぞれが専門特化していく方が結果的に高い価値が生まれる。その効果を私は誰よりも実感しています。
熟練技を標準化するのは、経営者にとって覚悟のいる取り組みです。しかし、時間をかけて取り組むからこそ、他社には真似できない価値が生まれるのも事実です。今回お伝えした「要素の分解」と「役割の分解」を通じて、改めて自社の標準化に取り組んでみてはいかがでしょうか。必ず新たな発見があるはずですよ。