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2022.07.19

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ホンネが見えづらい「人事評価制度への不満」を考える

安東 邦彦

人事評価制度のあるべき姿とは?

今回のブログでは、会社にとっても社員にとっても重要な「人事評価制度」を見つめ直してみたいと思います。

言うまでもなく人事評価は、社員のモチベーションに大きく影響します。評価が高ければ一層やる気が出るでしょうし、低ければ落ち込むこともあるでしょう。

一方、低い評価はその人の伸びしろであって、そこには成長のチャンスが眠っていると考えることもできます。

ただし、低い人事評価が社員の成長につながるためには条件があります。それは、下された評価にきちんとした根拠があり、社員自身が納得しているということです。

明確な根拠が示されない評価に対しては、社員は何をどう改善すればよいかが分からず、モチベーションを低下させ、最悪の場合は離職にもつながりかねません。

人事評価は社員からどのように受け止められているのでしょうか。

世の中の事例を紐解きながら、人事評価制度の現状をさまざまな角度から検討してみましょう。

人事評価制度に対する意識

最初に、人事評価制度の現状から確認したいと思います。下図は2018年に日経BPコンサルティングが行なった「人事評価に関する意識調査」からの抜粋です。被評価者1356人が自社の人事評価制度に満足しているかどうかを回答しています。

上記調査では、「不満」「どちらかというと不満」が62.3%と過半数を占めています。

ただ、評価者の立場からすると、この調査結果に対して納得しづらい部分があるのではないでしょうか。例えば、ここでいう被評価者の不満は、主観的な自己評価とのズレから生じる「自分はもっと認められるべきだ」というものも考えられます。

ただ、自己評価と他者評価は必ずしも一致しないのが自然であるため、それは個人的な感覚や努力の話であって、人事評価制度の問題ではない、と感じてしまうかもしれません。
しかし、これだけ不満が多いことを考えると、被評価者の個人的な不満だけで片付く話ではないように思えます。

では、調査の回答者は具体的に人事評価制度の何に不満をもっているのでしょうか。以下で詳しく見てみましょう。

被評価者の不満はどこにあるのか?

不満内容を明らかにするために、同調査では「人事評価制度に不満を感じる理由」についても聞いています。図2がその調査結果です。

図を確認してみると、不満のトップは「評価基準が不明確」(62.8%)です。
 
評価基準がすべて経営者の頭の中にあり、経営者から見た“頑張り度合い”で感覚的に評価を下すといった「何となくの人事評価」がその背景にあるのかもしれません。

これでは、被評価者が評価の理由を尋ねても、納得のいく説明は得られないでしょう。不満は募る一方です。

人事評価制度は、社員の働きに対して会社が評価を下すものです。これに納得ができなければ、社員のモチベーションは低迷し、最悪の場合は離職につながってしまいます。

問題自体を認識できていないのかも

繰り返しになりますが、人事評価制度への不満は、社員のモチベーションや企業の存続に関わる大きな問題です。しかし、その問題はなかなか表面化しません。

なぜなら、社員が辞めていく際の退職理由には「ホンネとタテマエ」があるからです。

多くの場合、退職希望者は円満に会社を辞めるためにタテマエを使います。ホンネを伝えたがために会社ともめるのを避けているのです。では、実際にどのようなタテマエが使われているのでしょうか。

下図はエン・ジャパンが行なった、退職理由のホンネとタテマエに関する調査からの抜粋です。ここでは実際に会社に告げたタテマエの理由を提示します。

退職理由の「評価・人事制度に不満があった」は、タテマエでは8位(4%)となっているのですが、同調査でホンネを見てみると、何と2位(12%)。

いくら理由を聞いたとしても、ホンネの理由を述べるかどうかは本人次第です。これでは、人事評価制度への不満を会社が正しく把握できないのも無理がありません。

人事評価制度の問題は、このように幾重にも見えづらくなっています。あなたの会社は大丈夫でしょうか。

(安東邦彦)

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