コンサルティング
前回のブログでは、ブレインマークス創業期に組織と人を軽視していた私自身の苦い経験について書きました。
31歳でブレインマークスを創業し、がむしゃらに売り上げを伸ばそうとしていた私は、社員に「なんでこんなこともできないんだ」ときつく当たることもしばしば。結果、社員の集団離職を招いてしまったのです。
そんな私にマイケル E.ガーバー氏は「社員が夢中になって頑張るゲームを作るべきだ」とアドバイスしてくれました。
以来私は、ブレインマークスという会社で経験できるゲームを社員が楽しみ、最高のパフォーマンスを発揮できるようにすることだけを考えて会社を経営しています。
だから、かつての私のように自分の感情に任せて厳しく指導するようなことはありません。
考えてみれば、怒鳴られたり、自分の存在を否定するようなことを言われたりしてまで取り組むゲームなんて、この世にはありませんよね。ただ社員にきつく当たることには何の意味もないのです。
では、日々の仕事をゲームとして捉え、社員が夢中になって取り組んでくれるようにするためには何が必要なのか。私自身の取り組みを少しだけご紹介します。
ここに1人の社員がいるとします。その社員はここ最近、目立った成果を上げられておらず、仕事に身が入っていないようにも思えます。
さて、あなたならどのようにしてこの社員へ接するでしょうか。
私の場合は、「このゲームを楽しめていないんだな」と捉えます。仕事に身が入っていない、あまり頑張れていない現状があるとすれば、それはこのゲームの面白さを分かっていないということ。
そんなときに必要なのは、ちょっとした攻略法をアドバイスすることです。どんなゲームだって、結果が出なければ面白くはありません。早く結果を出せるように攻略法を教え、必要なトレーニングも行うべきでしょう。
この場面で成果が出ていないことや仕事に身が入っていないことを責めても、何の意味もないことをお分かりいただけるでしょうか。情緒的な叱責や叱咤は、本人にとってはゲームの魅力をさらに削がれてしまうだけなのです。
中には、あまりにも責任感がない、あまりにも成果を上げられない社員もいるかもしれません。そうした場合は所属部署や担当業務を変えて、ゲームのルールを見直してあげることも必要だと思います。
中小企業で部署を変えるのは難しいかもしれませんが、担当する仕事内容を変えることはできるはず。誰しも実力以上の仕事を担当していると成果を発揮できないので、簡単な仕事をベイビーステップで担当し、少しずつ成長の実感を得てもらうべきでしょう。
そもそも人は、自分の思い通りにはならないものです。社員と接する中でパワハラに発展してしまう経営者や管理職は、ある意味では人に対する思い入れが強すぎるのかもしれません。
仕事を通じて成長してほしいからこそ厳しく指導する。成功して幸せになってほしいからこそ激しい言葉を投げかける……。
その思いがどれだけ熱いものであったとしても、意図が伝わらなければ、そして社員のためにならなければ「ただのパワハラ」です。
そのうちに経営者自身もモチベーションを削がれていってしまうかもしれません。自分の思いは伝わらず、人を雇ってもどんどん辞めていく。こんな状態では会社や事業の成長を望めるはずがありませんよね。
特に中小企業の場合、今は戦略や商品での差別化が難しい時代となっています。だからこそ、企業文化で差別化していくことがより必要になっていくはず。あのトヨタも、「カイゼン」の企業文化を社員が隅々で発揮していることが強みになっているのです。
社員が「この会社が好き」「仕事が好き」「頑張ろう」と思えなければ、良い企業文化は育ちません。その意味では、経営者自身が気をつけるのはもちろんのこと、徹底して社内からパワハラを排除していくことも、経営者の重要な役割です。
(安東邦彦)
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