コンサルティング
これまで、急成長を遂げる企業が直面する倫理観の喪失と再生に焦点を当ててきました。
今回は、企業が持続可能に成長するための鍵について深く掘り下げます。
このテーマを考える上で、私たちは「何のために事業を行っているのか」という根本的な問いに立ち返る必要があります。
この質問への答えは、企業が社会で担うべき役割と追求すべき目標を明確にし、組織全体が良心に基づいて行動する強固な基盤を築くことに他なりません。
具体的には、企業がその存在意義と目標をはっきりさせ、それを社内外に積極的に伝えることが重要です。
これにより、企業は信頼を向上させると同時に、従業員のモチベーションと満足度を高めることができます。
ビジネスは、単に利益を追求するだけでなく、より広い社会的責任を負うものです。
企業の倫理観は、毎日の意思決定や行動の方向性を決定づけ、企業が直面するさまざまな課題に対して、倫理的かつ責任を持った方法で取り組むことを促します。
その結果、企業は持続可能な成長を実現し、さらには社会全体の利益に貢献することが可能となるのです。
そのカギを握っているのは、顧客と従業員です。 不正を行う企業と、正道を歩む企業の違いは、その核心にある価値観にあります。
従業員が自社への恨みを持つ状況は、企業文化の深い問題を示しています。企業内で不満や不幸が広がっていると、内部告発や公の批判といった形で問題が明るみに出ることがあります。
ビッグモーターの例では、従業員による続けざまの内部告発がありました。このような厳しい時期にも、自社を弁護する声が聞かれないことは、従業員の間に広がる不満が深刻であるという明確な証拠と言えます。
社員や外部の人々が企業の行動や価値観に疑問を投げかけ、それに対する擁護がほとんどない場合、それは企業に対する信頼が失われていることを意味します。
多くの場合、事業の拡大を最優先し、それが人を不幸にしても構わないとする考え方が根底にあるように思われます。
企業が長期的な成功を収めるためには、このような企業文化の問題を真摯に受け止め、根本から改善する必要があります。
繰り返しになりますが、結局のところ「何のために」事業を行っているのか、その目的に立ち返ることが重要なのです。
社員が幸福でなく、常に人が入れ替わるような環境では、企業は表面的な業績を伸ばしていくことはできても、本当の意味での成功は得られません。
若い社員が「入社してよかった」と感じ、顧客がサービスに満足し、「御社にお願いしてよかった」と言ってくれること。
これこそが真の幸せであり、企業が目指すべき姿だと思うのです。
経営者は常に謙虚な姿勢を忘れてはなりません。
自己中心的な考えに陥ると、足元をすくわれることになります。
ビッグモーターも、元々はエンドユーザーのために良いことをしようという意志があったかもしれません。
しかし、その過程で社員を犠牲にし、結果的に不幸を生み出してしまったのです。
人は権力を持つと、それを行使したくなるものですが、その力を正しく、公正に使うことが絶対に必要です。
誰かを犠牲にして成り立つ成功は持続可能ではなく、最終的には終わりが訪れます。
エンドユーザー、社員、取引先、すべてのステークホルダーを尊重し、誰もが幸せになれる「三方よし」の精神が、企業にとって最も重要なのです。
成長と共に社会への貢献を忘れず、全ての関係者に対して正義と公平を保ち続けること。これが、持続可能な成長と真の成功への道です。
企業経営においてこれらのポイントを意識し、着実に歩んでいきましょう。
(安東邦彦)