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2024.02.09

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天才・秀才・凡人の「才能」を精査する 〜天才の創造性を生かすために私たちができること

安東 邦彦

「天才的な人材」を育てられるか

今回のブログでは、2019年に発刊され話題を読んだ北野唯我さんの著書『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版)の視点を借りて、企業における人材マネジメントの要諦を考えてみたいと思います。

同書では、世界が天才・秀才・凡人の3つの才能で成り立っているとしています。つまり、企業という1つの社会も、天才・秀才・凡人3つの才能が寄り集まっているということになります。

加えて同書では、1人の人間の中にも天才・秀才・凡人の側面が混在すると指摘しています。

いくら世界が天才・秀才・凡人で成り立っているとしても、すべての会社に必ず突出した生粋の天才が存在すると考えるのは現実的ではありません。

しかし、自社の中にも天才的な側面の才能を強く持っている人材はいるはずです。その天才が持つ「創造性」を潰さず、大切に育てていくことができれば、企業としての競争優位性を持つことができるのです。

その鍵を握るのは、社内で拮抗してしまっている天才・秀才・凡人の3者の関係性を知っておくこと。

詳細を見ていきましょう。

1つの提案に3者はどう反応するか?

最初に、『天才を殺す凡人』で必ず押さえておきたい論点から確認します。

それは価値を判断するうえで前提となるもの、つまり「軸」となるもの。天才・秀才・凡人が各々に持っている軸は、それぞれの個性を象徴する才能と同じです。

たとえば社内会議で「ある地方の祭りに協賛する」という議題が提案されたとしましょう。これに対して、天才・秀才・凡人はそれぞれどのように反応するでしょうか。

天才の判断基準は「創造性」です。そのため、そのお祭りによって地域の活性化だけでなく、新たな内外の交流も期待され、これまでなかった何かが生まれる可能性を嗅ぎ付ければ、計画に賛成するでしょう。

秀才の判断基準は「再現性(≒論理性)」です。そのお祭りに協賛することで自社に相応のリターンがあり、かつ今後もお祭りが継続され、十分な集客が見込まれるのなら賛成するでしょう。

凡人の判断基準は「共感性」です。共感性とは、「感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける」才能のこと。そのため、この提案に対する周りの反応や会議の雰囲気が良ければ賛成するでしょう。

こうして並べてみると、天才と秀才の判断基準の「軸」が違うのは明らかです。お祭りに創造性があったとしても、採算が合わないのなら秀才は反対します。

そして凡人がどちらに手を挙げるかは、その場の雰囲気次第。会社組織において説得力を持ちやすいのが秀才の判断基準だと考えれば、凡人は秀才の意見に従う確率が高いでしょう。

これはどんな企業でも、日常的に繰り返されている光景だと思います。

重要なのは天才が持つ創造性だけではない

同じ物事に対しても、3者はそれぞれ、その価値を判断する根本が違うので、わかりあうことは至難です。話し合ってもそれぞれが拠って立つ土台が別物なので、議論は平行線をたどりがちです。

コミュニケーションが成り立たないところに、良い人間関係が生まれるはずがありません。

また、創造性という価値基準を常に圧殺するばかりであれば、そこに挑戦はなくなり、この世に新しいものは生まれないことになります。

ところが実際に私たちは、革新的なイノベーションの成果物を享受しています。私たちが天才の才能「創造性」の恩恵を受けられているのはなぜなのでしょうか。

その立て役者が「共感の神」と言われる存在です。

凡人の中でも突き抜けて共感性が高く、天才に対する秀才の感情を感じ取ったり、実際に天才と出会い共感したりしていくことで「天才」の存在の重要性に気づきます。

共感性が高すぎるがゆえに天才の感情すら理解でき、天才を心理的な面で支えることができる存在なのです。

また、イノベーションを現実のものとする際には「最強の実行者」の存在も欠かせません。
 
最強の実行者とは、「『論理性』と『共感性』をあわせもち、一番多くの人の心を動かすことができる存在」のこと。

共感の神も最強の実行者も、ともに天才(創造性)の味方になり得ます。そして最強の実行者は共感の神を補完する関係にあります。

才能を伸ばすための最初のスイッチを押すのは誰か

『天才を殺す凡人』では、最強の実行者は共感の神とわかりあえる部分を持ちつつ、反発する存在として描かれています。なぜなら最強の実行者には、共感の神にはない「論理性」があるからです。

しかし物事を進めていくためには、自分にはない才能をうまく取り込んでいくことが大事です。反発する相手の才能を取り込むにはどうすればいいのでしょうか。

同書では、最強の実行者の協力を得るための殺し文句として「あなたならどうしますか?」を推奨しています。

共感の神は自分に足りない論理性を補うため、「あなた」と主語を置き換えることで、最強の実行者に訴えかけるのです。

ここまで、『天才を殺す凡人』に即して、いろいろな才能について学んできました。しかし同書では、決定的な役割を担う才能には触れていません。

同書では、後に共感の神として才能を開花させる主人公の指南役にハチ公の化身の犬が設定されています。彼はCWO(チーフ・ワンワン・オフィサー)として、すべての才能を見通したうえで、事態が動き出すように最初のスイッチを押します。

なぜ著者がこんな設定をしたのかというと、現実には「最初のスイッチ」を押す人がなかなかいないからではないでしょうか。

3つの才能による世界の成り立ちや、それぞれの判断基準について知見を得たら、次は誰かが組織にいる人たちの特性を理解したうえで、それぞれの才能を伸ばすための最初のスイッチを押す必要があります。

それは他でもないあなたかもしれません。

(安東邦彦)

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