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毎年改定・更新される都道府県別の最低賃金。2023年度の改定では最低賃金の全国平均が初めて時給1,000円を上回り、大都市圏を抱える東京・神奈川では時給1,100円台に乗っています。
すべての企業に賃上げプレッシャーが襲いかかる現在。従業員に高い賃金を払っても存続しうる会社にならなければ、人材採用への悪影響は避けられないでしょう。
人材不足で発展できなくなるばかりか、最悪の場合は「人手不足倒産」となってしまう可能性もあります。
求人市場に目を向ければ、業種によっては最低賃金ギリギリのラインで募集をかけている企業が見られる一方、事務職などでは時給1,500円を上回る条件の募集も見られます。
今後「好待遇」として受け止められる求人は、時給2,000円台の世界での比較になっていくのかもしれません。
では、どうすれば中小企業は好条件で人材を確保できる企業になれるのでしょうか。
実はすでに、さまざまな業界で新しい挑戦が始まっています。
中小企業が生産性向上を実現するには、今までとはまったく違う工夫をしていかなければなりません。
たとえば建設業界ではかつて、月のうち従業員が稼働した日数だけの給与を支給する「日給月給」のやり方が常識でした。そのため従業員は、雨で現場が休みになってしまうとその日数分だけ収入が減っていました。
しかし今や、このやり方では人が集まりません。そこで建設業界の先進的な企業は雨の日を休みにするのではなく、自社製品として資材を作って売るなど、新たなビジネスモデルを確立しています。これによって固定月給制を実現している会社もあるのです。
また、前回のブログでは生産性向上のために中小企業はどんどんテクノロジーを活用すべきだと書きました。損保業界ではこうした変化の波が着実に広がっています。
バックオフィスの事務はできる限りAIやロボットに任せ、従来の事務スタッフは顧客とのコミュニケーションを図るポジションに移行。実際に営業部門には、事務系部門出身の女性スタッフがどんどん配置されています。
いずれは、データ入力などAI・ロボットで代替できる業務の人材募集は姿を消すのかもしれません。
いかに自動化・効率化を推し進めても、コミュニケーションの領域ではどうしても人間にしかできない仕事が残ります。
結果を出している営業パーソンのスキルをAIに教える試みは何年も前から行われていますが、商談の現場ではやはり人間には勝てません。売れる営業パーソンは、言葉やロジックに落とし込めない「場作り」などの要素を持っているからです。
その意味では、企業がやるべきことはシンプルだと言えます。
自社のビジネスプロセスの中で、「自分たちにしか価値を出せない部分」を見極め、それ以外の業務に対しては徹底的に省人化したり、アウトソースしたりといったアクションを取っていくべきなのです。
企業によっては、従来30人で回していた事業を20人で、さらに上手に回せるようになるかもしれません。
最初のブログでも述べたように、賃金相場がどんどん上昇していくことは日本経済全体にとってプラスに働くはずです。そんな時代だからこそ、中小企業にはこれまでの常識にとらわれない工夫が求められています。
(安東邦彦)