コンサルティング
2023年4月1日より、中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が50%に引き上げられました(2023年3月までは25%)。
「働き方改革関連法」における中小企業向けの猶予措置が終了し、大企業と同じ基準に揃えられてから数ヶ月。中小企業の残業の実態も大きく変わりつつあるのではないでしょうか。
(参考資料)厚生労働省リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf
残業の放置は、従業員の健康に悪影響を及ぼすことはもちろん、中小企業の経営にも悪影響をもたらします。この問題は「生産性向上」という、中小企業が抱える本質的な課題と裏返しだからです。
しかし、経営者がどれだけ残業削減を発信し、旗を振っているつもりでも、なかなか状況が変わらない中小企業も少なくありません。
そこで今回のブログでは、中小企業がなかなか残業を削減できない理由や、その先にある生産性向上の課題について考えてみたいと思います。
まず初めに、極端なことを言うようですが、そもそも経営者の多くは「残業を減らしたい」などとは考えていないのではないでしょうか。
なぜなら経営者自身は、自分の労働時間など一切気にかけない生き物だからです。
成果が出ているなら早く仕事を切り上げても構わないけど、成果が出ていないのなら長く働くべき。それが従業員に対する偽らざる本音でしょう。
とはいえ昨今の社会の風潮では、そんな本音を口にすることはできません。成果の有無にかかわらず労働時間を短くしなければならない時代です。
「この風潮が日本経済の失速につながっているのだ」と憤る人もいるかもしれませんね。
私と同世代の50代前後の方は、かつての日本企業の常識に縛られたままだとも言えます。
昔は従業員にとにかく長く働かせ、他方で残業代をごまかすような企業も珍しくありませんでした。長時間労働で何とか成果を出し、残業代の支出が少なければ、生産性は一見高く見えるでしょう。
そうした見せかけの数字を理由にして、日本の中小企業は「決められた時間の中で生産性を高める」努力を何十年も怠ってきたのです。
実際のところ、仕事というものは長く働くことで成果が出やすくなる面はあると思います。私自身も若手時代からそうやってきました。
しかし、残業して何とか成果を出すことが当たり前になっていると、「限られた1日8時間の中で最高の成果を出さなければいけない」という意識が生まれません。
最悪、残業すればいい。そう考えている状態の従業員に残業をさせなくなれば、生産性はますます落ちていきます。
考えてみてください。練習が嫌いなサッカー選手はいつまでもサッカーが上達しません。その状態ではプロを名乗れるはずがありません。
プロとして成果を出す選手は、成果を出すための練習にもワクワクし、ワクワクするからこそ上達していくのです。プロのビジネスパーソンにも同じことが言えるはずです。
では、従業員がワクワクしてビジネスに取り組めるようにするためには何が必要なのか。次回のブログでは、ブレインマークスの取り組みも交えて考えたいと思います。
(安東邦彦/第2回に続きます)