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2019.02.06

コンサルティング

「職場環境の整備」が持つ影響力

安東 邦彦

今回は、「物理的な意味での職場環境」について考えてみたいと思います。

 

机の配置や照明の明るさ、ホッと一息つけるスペースの有無など、

職場環境は様々な要素で成り立っています。

 

実は、こうした職場環境は社員の仕事ぶりにも影響を与えています

 

例えば、働くオフィスが窓もなく、

自然光が一切差し込まないようなところだったらどうでしょう。

かなり気分が減退するのではないでしょうか。

 

 

■ツリーハウスや海賊船があるオフィス

 

一方、壁一面が陽光をいっぱいに取り込むガラスで、

そこから緑が見えるような環境であったとしたら、

日々のモチベーションもかなり違ってくるだろうと想像できます。

 

会社ごとに職場環境に違いがあるのは事実です。

現に、「そこまでするのか!」と驚くほどの職場環境を実現している企業もあります。

 

驚かされるのは、インベンションランド(米ペンシルベニア州)のオフィス。

ここは、ただのオフィスではありません。

まるで遊園地のように、ツリーハウスや海賊船があるのです。

しかも、テレビゲームをするスペースまであります。

 

「そんなのウチの会社には無理だよ」というのが大半の企業の感想でしょう。

たしかに予算もスペースもそれぞれの事情があります。

しかし、何か少しでもやれることはあるはずです。

 

もちろん、闇雲にユニークなオフィス作りを奨励しているわけではありません。

職場環境を整備することには、目的があります。

それは、社員のモチベーション向上と企業理念の浸透です。

 

 

■職場環境のメッセージ

 

上記のインベンションランドは、革新的な発明をすることを業務とする会社です。

この会社の製品のひとつに「パーティートラベラー」があります。

 

どこか外でパーティーをしようとするとき、

苦心してさまざまな手作りお菓子を前もって準備しても、

会場に運ぶまでに形が崩れてしまうことはよくあることです。

 

この悩みを解決したのがパーティートラベラーでした。

 

認識していただきたいのは、課題を解決するには

「既存の枠組みに囚われない自由で柔軟な発想」が必要で、

そのためには社員に上記のような職場環境を提供するのが

より有効であると経営者が考えたということです。

 

つまり、業務の成果をあげるだけではなく、

さらにはインベンションランドという会社が何をする会社か、

どんな考え方を大切にするかといったメッセージを

会社の内外に伝達するという目的もあるのです。

 

ですから、職場環境を見直してみようという際には、

まずは自社がどんな会社であるかを見詰めなおすことが重要です。

 

それを前提にして、社員に対してどんな成果を求め、

社内外の人たちにどんなメッセージを送りたいかを考えるべきです。

 

そこに一貫性があればあるほど、職場環境のメッセージは説得力をもち得ます。

 

 

■天井の高さが60センチ違うだけで……

 

とはいえ、日本の旧来のオフィスレイアウトでも、

実際にそれなりの成果も上がっているのも事実です。

部署ごとに机をシマに並べ、そのシマを一目で眺められるように上司の机を配置する。

このようなレイアウトの会社は、多いのではないでしょうか。

 

だったら、余計なお金と手間をかけてまで

職場環境を見直す必要はないのでは?

そうした意見もあります。

 

では、職場環境が社員の仕事ぶりに、

どれだけの影響を与えるのでしょうか。

ここで、ある科学的実験の結果をご紹介しましょう。

それは天井の高さに関する実験です。

 

2007年、マイヤーズ・レビー(現ミネソタ大学教授)らは、

ライス大学の学生100人を対象に抽象的思考のテストを行ないました。

テストの内容は、一見無関係に思えるものの関連性を見つけるというもの。

 

参加者の半数は天井の高さが3メートルの部屋でテストを受け、

残りの半数は天井の高さが2.4メートルの部屋でテストを受けました。

天井の高さ以外はまったく同じ作りの部屋で、

もちろんテストの内容も一緒です。

 

両者の違いはたかだか天井の高さ60センチに過ぎませんでしたが、

天井高3メートルの部屋でテストを受けた学生のほうが、

明らかに関連性をうまく見つけていたのです。

 

この実験結果が伝えてくれるのは、

「空間は人の考え方に影響を与える」という事実です。

空間をうまく使うと社員の働きぶりにも影響が出るならば、

これを活用しない手はありません

 

■クックパッドがオフィスに込めたメッセージ

 

ただ、限られた条件の下でオフィス空間を

広くすることは難しいかもしれません。

 

しかし条件が限られていても、自社がどんな会社か、

どんなメッセージを内外に伝えたいかを経営者が明確に認識すれば、

きっとできることはあるはずです。

 

ではもう一つ、事例をご紹介します。

料理レシピのアプリで急成長したクックパッドの事例です。

 

クックパッドの他のオフィススペースを見ると、

一般的なそれと変わらない印象を受けます。

しかし、ここのオフィスで特徴的なのは、

巨大な「アイランドキッチン」が設えられていることです。

 

このキッチンにはシンクが6つあり、

IHクッキングヒーターが3セット備わっています。

 

キッチン脇には広々としたダイニングがあって、

社員が投稿レシピを参考に作った料理が食べられるようになっています。

 

また、クックパッドのオフィスには巨大な本棚があって、

そこには世界中のレシピ本が集められています。

 

こうした環境によって、

これまで料理をしたことがなかった社員もいつしか料理を作るようになり、

嫌いなものがいつの間にか食べられるようになった社員も増えました。

 

こんなオフィスなら、そこで働く社員も、訪れる外部の人も、

クックパッドがどんな会社なのかが見て取れるのです。

 

この記事では、いくつか職場環境の事例を紹介しました。

海賊船、天井の高さ、アイランドキッチン……。

最初からすべてを完璧に整えようと思う必要はありません。

 

まずは、職場環境が社員のモチベーションと企業理念の浸透に

影響を及ぼすことを認識し、

自社ならどんなメッセージを発信するのかを考えるところから、

始めてみてはいかがでしょうか。

 

(安東邦彦)

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