コンサルティング
「経営は人」という言葉をよく聞きます。
経営者の多くは本当にそう実感していると思います。
しかし私たちは、いつの間にか「人に依存」してしまっていることもあります。
やる気があって真面目で一生懸命なのに、なぜか成果が出ない……。
ときにはそんな社員もいるのに、
その改善はなお、「人」に依存して委ねてしまう。
このような場合は、「システムの改善」によって解決を試みる必要があります。
■気合いや根性だけでいいのか
「経営は人」である。
そう考える経営者は多いと思います。
実際に大半の中小企業の成長は「人」に依存する割合が大きい。これは誰もが納得するところでしょう。
当然、「人」に対する期待も大きく、
売れなかった営業社員に「もっと売ってこい」と言い、
ミスしてしまった社員には「ミスしないようにがんばれ」
と発破を掛け、気合いや根性だけで頑張らせようとしてしまうのです。
社員の気持ちになってみると、「売ってこい」と言われて売れるなら苦労しません。
もちろんミスしようと思ってミスしているわけでもありません。
私たちは、経営は「人」だといいながら、
いつの間にか「人」に依存してしまっているのではないでしょうか。
■解決は「人」ではなく「システム」
もちろん、社員のやる気に問題があるというケースもないとは言えません。
しかし、真面目で一生懸命なのに成果が出ないという社員も多いはずです。
このような場合はその改善を「人」に委ねるのではなく、
「システムの改善」によって解決を試みる必要があります。
この問題を掘り下げるために、私が過去に受けた「資金繰りの相談」を例にあげてみます。
「月末になるといつも生きた心地がしない。このままでは会社が潰れてしまう……」
「私はお金の管理が下手で……」
その社長は、いつも自分の能力不足を嘆いていました。
しかし私にはそんなに能力のない社長には見えませんでした。
内情を詳しく調べてみると、
その社長は「どんぶり勘定」を体現しているような管理をしていたのです。
そこで、この問題を解決するために、
私はお金の流れを毎週管理する「資金繰りシート」をつくり、その使い方を教えました。
■「能力不足」ではなく「システム不足」
たったこれだけのことで、結果はすぐに現れました。
お金の流れを把握することで、自然と無駄使いをやめたり、
投資のタイミングを工夫したりするようになったのです。
また、会社を安定的に運営していくためには
どれくらいの余剰資金が必要なのかを意識するようになり、
事前に資金調達方法を検討するようにもなりました。
わかりやすく言えば、浪費家が倹約家になったようなものです。
その社長は
「資金が潤沢にあるわけではないけれど、以前のような不安は消えた。
たったこれだけのことで日常が変わるなんて、不思議だ」
と言っていました。
結局のところ、この会社の資金繰りの悪さは、
社長の能力不足ではなく「お金を管理するシステム」の不足だったのです。
このように、会社での問題を「人の能力不足」ではなく、
「システムの不足」だと考えることで、
問題の根本原因を探り、解決に集中できるようになります。
経営者が、会社の財産である「人」の能力が高まることに期待するのは当然です。
しかしそれだけでは会社は成長しません。
期待しているだけでは「人」も成長してくれません。
平凡な人材が活躍できる環境、社員が育つシステムづくりに心血を注ぐ。
それこそが経営者のやるべきことだと考えています。
(安東邦彦)