YouTube
今回は、書籍『THINK CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』を、中小企業の経営に生かす方法をご紹介します。
著者のクリスティーン・ポラスさんは、ジョージタウン大学の准教授であると同時に、GoogleやPIXERといった世界的企業で活躍する著名なコンサルタントでもあります。そして本書は、ポラスさんや研究者たちが「ビジネスの現場における礼節」について体系的に分析・検証した結果をまとめた、他に類を見ない画期的な書籍です。
今回は、本書の内容を要約しながら、無礼さが会社に与える不利益や、礼節あるふるまいがビジネスにもたらすメリットについて解説します。
そもそも、「礼節」とは具体的にどのような態度のことを指すのでしょうか。本書には、礼節ある人に共通する態度が、次のような「3つの原則」として紹介されています。
実行例:明るい表情、明るい感情を保つよう意識する
実行例:相手の立場が自分より上か下かに関わらず、同じように敬意をもって接する
実行例:接する相手に関心を持ち、相手の伝えたいことを理解しようと努める
反対に言えば、「しばしば不機嫌をあらわにする」「相手によって態度を変える」「人に関心がなく、話を理解しようとしない」といった態度が、無礼なふるまいにあたるということですね。
それでは、この前提を踏まえつつ、無礼さが企業にどのような損害を与えるのかを具体的に見てみましょう。
本書の研究では、無礼な人は企業に次のようなデメリットを与えることが明らかになっています。
1 同僚の健康を害する
2 会社に損害をもたらす
3 周りの思考能力を下げる
4 周りの認知能力を下げる
5 周りを攻撃的にする
まず、無礼な人は同僚の精神面に悪影響を与えるばかりか、免疫システムを害して呼吸器疾患や癌などの罹患リスクを増加させることが分かっています。恐ろしいことに、中年世代の会社員で無礼な態度の同僚を持つ人は、そうでない同世代の会社員に比べて死亡リスクが2.4倍も上昇するのだそうです。
また、アメリカ心理学会の試算によると、職場で発生する事故の60~80%は仕事上のストレスに起因するものであり、こうした事故などがもたらす損害は、米国全体で年間5000億ドルに上るとのこと。また、人前での叱責などによって従業員間の険悪な人間関係が顧客に伝わると、その企業やブランドに対する印象が極端に悪化することも分かっています。
そして、無礼な態度は周囲の思考力や認知能力を削ぎ、結果としてミスの増加や生産性ダウンを招きます。さらに、屈辱的な発言を受けた人は自らも攻撃的な態度をとる傾向が高まり、その集団の雰囲気をますます険悪なものにしてしまうのだそうです。
さらに、企業への損害や思考力の低下といったリスクは、「無礼な態度をとった理由」や「無礼な発言の程度・回数」に関わらず生じるとのこと。もしも社内に無礼な人がいたら、放っておかずにすぐ対処しなければならないことが分かりますね。
次に、本書に記載されている「礼節のある言動が、その人自身や企業にもたらすメリット」をご紹介します。
1 礼節ある人は、仕事を得やすい
2 礼節ある人は、幅広い人脈を築ける
3 礼節ある人は、出世の可能性が高まる
4 礼節ある上司がいると、チームの業績が上がる
5 礼節ある経営者は、従業員に安心感を与える
まず、周囲に対して礼節をもてる人は、それだけ人に愛され、新たな仕事や人脈を得る機会に恵まれやすくなります。また、周囲から礼節があるとみなされている人は、そうでない人に比べて「リーダーにふさわしい」と評価される可能性が2倍に高まるのだそう。
さらに、部下に対して礼節をもって接し、一人ひとりの人間性を認められる上司がいるチームは、高い業績を上げやすいことも分かっています。たとえば、社長が従業員への礼節を重んじることで知られる「コストコ」の従業員ひとりあたりの売上は、ライバル企業であるウォルマートに比べて2倍も高いのだとか。
そして、礼節ある経営者は、企業全体にかなりの好影響をもたらします。実際に、会社員2万人を対象に行われた調査では、「経営者が敬意ある態度で接してくれる」と考えている人ほど幸福感や満足感が高く、仕事への熱意や集中力も顕著に高まるというデータが出ているのです。
本書の研究によって、礼節が単なるきれいごとや精神論ではなく、個人や企業に大きな利益をもたらすことが明らかになりました。
ぜひ、本書をご一読いただき、礼節を守る教育の重要さを今一度確認してみてください。
社員一人ひとりや管理職、そして経営者であるあなた自身が礼節を重んじることは、きっとあなたの会社の業績を伸ばし、健やかな成長をますます加速させる糧になるのではないかと思います。