コンサルティング
新型コロナウイルス流行により外出自粛が始まった約2ヶ月の間に、私たちはこれまでにない規模とスピード感で、働き方の見直しをしなければなりませんでした。
緊急事態宣言が解除された今でも、新しい生活様式として極力人と接触しないスタイルが推奨され、企業の経済活動は続々とオンライン化しています。
経済活動のオンライン化が進む中、「なかなか思うようにオンラインへ移行できない」と悩んでいる職場も少なくありません。
特に注目したいのは営業職です。
従来の営業には、「人と会って話す」という活動が不可欠でした。今でも「営業は足で稼いでナンボ」と考えている人は少なくないはず。
リモート化できそうなのになかなかできない……。営業はそんな職種の典型例なのかもしれません。
私たちブレインマークスでは、数年前から営業活動のオンライン化を徐々に進めてきました。現在では初回のアポイントからクロージング、その後のフォローに至るまで、すべてをオンラインで完結させられるようになっています。
オンライン営業へ移行し、実践するためには何が必要なのか。
今回から全4回にわたって、私たちの経験と知見をもとに解説します。
そもそも、なぜ「営業は足で稼いでナンボ」といった考え方が定着しているのでしょうか。まずは営業という仕事そのものの特性から考えてみましょう。
営業で成果を出そうと思うなら、「顧客や見込み客へ会いにいきたい」「会わなきゃいけない」と考えるのは当然でしょう。
実際のところ、「会いたい」と考えるのは理に適っているのです。
営業の世界ではよく「単純接触効果」の重要性が叫ばれますよね。「人と人は、会えば会うほど親近感が高まる」というものです。親近感が高まれば、当然のごとく商談が前に進む可能性が高まっていきます。
そうした意味では、営業マン自身が「足繁く通おう」と考えるのは間違いではありません。
しかし、単純接触効果を上げる方法は直接会うだけではないはずです。
大昔は、顧客とコミュニケーションを取る手段と言えば顔を出して会話するか、電話やポケベルを活用するといった方法しかありませんでした。
そんな時代を経てニュースレターなどの新たな手法が登場し、メルマガやSNS、YouTubeなど、今では顧客との接点を増やすためのさまざまな手段が登場しています。
私たちは日々テレビを通じてたくさんの芸能人を目にしています。好きな芸能人には実際に会ったことがなくても、自然と親近感を持っていませんか?
これが「会わなくても単純接触効果を高められる」証拠です。
単純接触の回数なら、現場へ足を運ぶよりもオンラインのほうが稼ぎやすいに決まっています。相手に会えれば越したことはありませんが、それができなくても、今ではテレビのようなオンライン会議で顔を合わせながら話すことも簡単にできます。
電話以上の単純接触効果がある。それがオンライン営業なのです。
このように、オンライン営業へ移行していくためには、まず企業として営業活動への意識を変えていく必要があります。
そして同時に求められるのが、営業マン個人の意識改革です。
なぜなら、オンライン営業へ移行するためには、人柄や笑顔や贈り物で結果を出そうとする「人間関係型営業」からの脱却が必要だから。
人間関係づくりのスキルが営業としての最大の強みになっている人は、どうしても訪問重視のスタイルになってしまうものです。
私自身がオンライン営業で結果を出せた背景には、人間関係型営業を20代のときからずっと排除してきたことがありました。
もともと無精な性格の私は、若手の営業時代、訪問した先へいちいちお礼状を書くのが嫌で仕方ありませんでした。贈り物をするのも苦手です。
営業される機会が増えた今では、商談をした営業パーソンからご丁寧に「お礼メール」が届くこともありますが、はっきり言って「このメールに何の意味があるのだろう?」と思っています。
そんな私が結果を出すために取り組んできたのは、顧客の課題を的確につかみ、解決に向けたストーリーをわかりやすく伝える「課題解決型営業」でした。
この積み重ねが、すべて現在のオンライン営業につながっています。
オンライン営業では、課題解決のストーリーをわかりやすく伝える力が不可欠です。「Zoomを使えばオンライン営業ができるらしい」と聞いて、実際にやってみても、人間関係型営業のスタイルではなかなか結果が出ないのではないでしょうか。
リアルな場で会っていると笑顔でごまかせてしまうことも、画面上ではなかなか伝わりにくいもの。いかに人柄が良くても、それだけで顧客の課題を解決することはできません。
課題解決型営業を実践してオンラインで生かすためには、どんな力を鍛えればいいのか。次回はこのポイントについてお伝えしたいと思います。
(安東邦彦)